研究開発

ヤマハホール:1 騒音・振動との戦い

ヤマハの研究開発技術の粋を集めたビル

ヤマハ銀座ビル概観

2010年2月26日、銀座通り沿いにヤマハの新たな音楽拠点「ヤマハ銀座ビル」がオープンしました。このビルはホールやスタジオを備え音・音楽の情報発信の拠点となるべくして誕生しましたが、オープンまでの筋道は苦難の連続でした。そんな数多くの課題を解決したのが、研究開発で培ったヤマハの技術。このコンテンツでは、最新技術の粋を集めたこの「ヤマハ銀座ビル」の秘密を紐解きます。

騒音・振動との戦い

新しいヤマハ銀座ビルには、2つのライブスペースが存在します。1つは地下に設置されたイベントスペース「ヤマハ銀座スタジオ」、そしてもう1つがヤマハ銀座ビルの顔とも言えるコンサートホール「ヤマハホール」です。また、1階エントランス脇にはイベント空間が、6階にはミニコンサートサロン、そして 10~12階では音楽教室スタジオを備えるなど、ビル全体に音楽を演奏するための空間が存在します。そんなビルにとっての課題は、騒音と振動をなくすことでした。

というのもヤマハ銀座ビル地下のすぐ脇には、地下鉄銀座線が走っています。なんと地下鉄とビルとの間には壁1枚しかなく、騒音とともに振動も大きな問題となって頭を悩ませることとなりました。また銀座通りは車の往来も多く騒音の大きな大通りであり、さらにビル内の各音楽スペース同士が騒音源となるなど、ビル内部で音楽を聴く・奏でる状態に適した「静音」を保つことは非常に困難な課題となっていました。

豊富なホール音響設計経験を生かす

そこで振動と騒音を防ぎ、最適の音響を実現するために、これまで200例を超えるホール音響設計を通じて高度な技術と膨大なノウハウを蓄積しているホール音響設計チームが、プロジェクトに参加することになりました。

ところが問題の解決は、一筋縄にはいきませんでした。一般的なコンサートホールの振動対策ではホールの周りに防振ゴムなどの特殊素材を用いるのが一般的ですが、今回のようにビルが地中深くまであり、地下鉄などの振動を伝えやすい構造になっていることを考えると、そのような方法での防振対策には限界があります。そこで設計チームが考え出したのが、ホールに到達する前に諸悪の根源である振動を止めてしまおうというものでした。

総力をあげて

ヤマハ銀座ビルの防音・防振対策一覧

 (クリックすると拡大します)

プロジェクトチームは、まずホールをビルの上層部に設置することにより、振動・騒音源である地下鉄から物理的に遠ざける試みを考え、7~9階にかけてホールを設置することとしました。またビルそのものの躯体や床に使用されているコンクリートの量を増やし、ビル自体の重量を増やすことで振動を防ぐという対策も講じるなど、大掛かりな防振・防音対策を施したのです。

しかしプロジェクトチームの音響設計者は、これでも安心しませんでした。ビルのような大きな建築物の場合、竣工してから失敗に気づいても取り返しがつかないからです。中でも新ヤマハ銀座ビルの設計は、新しい銀座のランドマークであり、またヤマハを代表するビルとなるべく期待を背負う一方で、現実の環境や条件は厳しく、前代未聞のチャレンジばかりだったのです。

そこで、ホール周りの壁・床・天井をすべて二重にし、その間には振動の伝搬を防ぐ特殊素材ゴムを挟みこみました。また空気を伝搬する音と躯体を伝搬する振動を同時に防ぐための「ボックス・イン・ボックス」と呼ばれる浮き構造を、ホールだけならずスタジオや楽器店舗・音楽教室に加えてトイレにも採用するなど、音や振動の発生しそうな部分に軒並み取り入れ、従来のビル設計ではありえないほどの、二重、三重に及ぶ防音・防振設計を取り入れました(右図)。図面を見た工事担当者も「図面が間違っているのかと思った」と思うほどの徹底振りで、「これは究極だ」と言わしめるほどでした。

こうしてヤマハ銀座ビルにホールを設置するための環境が整いました。やっとホールの音響を設計するためのスタート地点に着くことができたのです。下図はビル全体の防音・防振図からホールの部分だけを抜き出したものです。ホールの床に防振ゴム浮床が2重に設置されているのがわかります。

ヤマハホール防音・防振対策拡大図

(クリックすると拡大します)

図はヤマハ銀座ビルに施された防音・防振対策を図示したもの。矢印以外の表示は全て防振・防音の対策で、特に浮床ゴムで囲まれたホールは浮いた構造になっているのが見て取れます。サロンや練習室も浮床と防音ゴムで囲まれており、お互い音や振動を伝えない構造になっています。

関連技術一覧

ヤマハホール:2 ここにしかない響きを目指して

ヤマハホール:2 ここにしかない響きを目指して Arrow_right_small

「ヤマハホールでしか体験できない響きを創出したい」と考えたチームは、まったく新しいタイプのホールを目指しました。その構想として生み出されたのが、奥行きよりも高さが特徴のホール形状と音響でした。アコースティック楽器に最適なコンサートホールでありながら、日本で唯一の響きを目指したのです。

3D音響

3D音響 Arrow_right_small

音を立体的なものとして感じる仕組みを解き明かし、「良い音」の追求に生かそうというのが3D音響の研究です。

音響シミュレーション技術

音響シミュレーション技術 Arrow_right_small

音響シミュレーション技術の導入により設計段階で音響を阻害する要因を見極め、悪い部分を試作品を作る前に排除することができるようになったため、設計の品質を高めるとともに製品開発に関する時間とコストを飛躍的に減らすことができるようになりました。

ホール音響設計

ホール音響設計 Arrow_right_small

音・音楽に関するあらゆるシーンを総合的にプロデュースするヤマハは、そのノウハウと先端技術を用いて、従来の音響設計の枠を越えた新しい音響空間造りをお手伝い致します。

ヤマハホール1、2 用語集

ヤマハホール1、2 用語集 Arrow_right_small

ヤマハホール1、2の用語を解説します。
・ボックス・イン・ボックス
・シューボックス型
・アリーナ型など。

ページトップへ戻るReturn to Top