研究開発

クラウド型VST

クラウド型VST

クラウド型VSTとは、高度なオーディオ処理をサーバー側で行うことにより、特別な機器を必要とせずに音楽制作ができる環境を提供することのできる、まったく新しい音楽制作テクノロジーです。VSTとはエフェクター、シンセサイザーをソフトウェアで実現し、専用の機器を使うことなく、汎用PCで処理するためにスタインバーグ社が提唱した仕組みで、業界のデファクト・スタンダードの1つとなっています。

一方でクラウドとはインターネット上にあるサーバーを、ユーザーが好きなときに好きなだけ使える仮想マシンに見立てて機能を提供するような概念を指す言葉ですが、ここににおいては、インターネット上にある様々なリソース(回線やサーバーなど)を活用しながら機能が提供できる仕組みを指しています。クラウド自体は近年のインターネット関連サービスにおいては重要なキーワードとして位置づけられているので、ご存知の方も多いかもしれません。

クラウド型VSTとは、このクラウドの概念をもちいて、インターネットを通じたVSTサービスをユーザーにとって高い利便性で提供できる仕組みを提案するものです。

音楽制作は敷居が高い?

近年音楽制作や音楽編集の現場では、高性能化した一般向けPCで専用ソフトウェアを用いて作業を行うことが一般化しています。以前であれば録音をやり直す必要があった「音程の補正」「音の長さを変える」といった高度な処理も、このVSTをはじめとしたソフトウェアを用いて処理することができるようになりました。

しかし、一方ではそれらソフトウェアの利用に対するハードルは高く、業務や本格的な趣味の利用に限られているのが現実です。その理由としては、専門的な技術や操作を必要とすることに加え、高価なソフトウェアを購入しなければならないというものでした。

そこでヤマハが研究開発を続けてきたものが、必要な機能を必要なときだけネットワークを通して利用することのできる「クラウド型VST」という仕組みです。今まで自分の制作環境に用意しなければならなかった専用の機材やソフトウェアが不要になり、負荷の高かった計算などはサーバーに任せることができるため、処理能力の弱い出先のPCや携帯端末からも高度な処理が可能となります。加えてクラウド型VSTでは、大容量のサウンドデータを必要とするソフトをインストールする必要がなくなるため、保存領域の少ない携帯端末やモバイルPCなどで音楽制作作業ができるというメリットがあります。

携帯端末上でソフトを動作させることができます

実用的な仕組みを試行錯誤

クラウド型VSTのポイントは、処理をサーバー側で行っているところです。そのためにはサーバー側とオーディオファイルやMIDIファイルををやりとりする必要があります。当初はファイルの全てをサーバー側に渡し、処理が終わったファイルを受け取るという仕組みを取り入れていました。ただしこの仕組みだけでは効率が悪い場合があります。通常の音楽制作作業では、たとえば5分の楽曲の中のある部分に処理をかけて再生しながら少しずつ調整を行っていく場合が多いのです。ファイル全体をサーバーとやりとりする方式では、処理したい箇所以外も含めてファイル転送するため、長い転送・処理時間がかかってしまいます。

そこで新たにストリーミング方式を導入しました。この方式では必要な部分を再生しながら逐次サーバー側に渡し、処理後にその部分だけを受け取って音を確認することができるため、より小回りのきいた編集作業を行うことができるようになります。クラウド型VSTでは、この両方の方式を使うことができます。

ネットワーク環境に依存しない仕組みを目指して

インターネットを介してサーバーで処理をするクラウド型VSTには、当然ながらインターネットに接続したネットワーク環境が必要です。しかし実際の音楽制作作業を考えると、常にネットワークのある場所で作業ができるとも限りません。そこで、オーディオ処理を行うプラグイン自体を一時的にダウンロードして、ネットワークにつながっていないローカルPC上でも処理を行えるようにする方式を提案しています。この方式では「ソフトを無制限にダウンロード、コピーされてしまう」可能性がありますが、現在それを防止するための認証と暗号化の仕組みを導入中です。

新しい音楽制作のスタイルを

こうした特長により、クラウド型VSTは場所や端末を選ばない、シームレスな音楽制作環境を提供することができます。例えば編集スタジオでは使い慣れたPCを、録音先では最小限のインターフェースを持った端末を、移動中には軽量な携帯電話を。それぞれのシーンに合わせた最良な環境を選択することで、いつでも、どこでも、音楽制作ができる。この技術は、今までは夢のようだったそんな制作スタイルの実現を目指し研究・開発を行っています。

以下はクラウドVSTを発表した際のデモ映像です。

導入事例

NetVOCALOID
歌詞データなどをサーバーに送ることで、サーバーが歌詞に合わせたVOCALOIDの歌声合成、音声処理を行い、ユーザの端末へとオーディオデータを返します。

NetVocaloidの構造

関連サイト・ニュースリリース

2010年6月11日
ネットワークを通して音声処理や音楽制作を可能にする技術『クラウド型VST』を開発
-携帯端末利用者から音楽制作のプロまで、欲しいときに必要な機能を提供-

クラウド型VST
VSTプラグインをネットワークで利用可能にする技術

関連技術一覧

特集:VOCALOID

特集:VOCALOID Arrow_right_small

VOCALOID(ヴォーカロイド)とは、ヤマハが開発した歌うシンセサイザー(歌唱合成、音声合成ソフトウェア)の技術名称です。2003年の発売以来、多くの会社から、VOCALOIDを活用した製品が発売され、人気を博すと同時に、VOCALOIDを使ってプロやアマチュアの制作者によって作られた音楽や動画が話題を集めています。

クラウド型VST 用語集

クラウド型VST 用語集 Arrow_right_small

クラウド型VSTの用語を解説します。
・VST
・エフェクター
・クラウド
・MIDI
・ストリーミングなど。

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