研究開発

音場制御パネル(調音パネル)

音場制御パネルの写真

聞きなれない言葉かもしれませんが、実は皆さんの生活に深く関わっている環境的要素のひとつに「音場(おんじょう)」というものがあります。この「音場」とはある空間が本来持っている音の響きかたを指す言葉で、例えば自宅の居間などは生活するのに適した「音場」になっているため、私たちはリラックスして過ごすことができています。また音楽専用のホールなどでは音楽を演奏するのに適した「音場」となっているため、ストレスなく音楽を楽しむことがでるのです。

一方で「音場」が適していない空間とはどのようなものでしょうか?例えばですが、なんだか「ビーン」という音が響くような会議室を利用したことはありませんか?また子供のころに体育館で朝礼や運動を行った際、先生たちの話が聞き取りにくかったり、自分の声が通りにくかったりする状況を経験したことがありませんか?これこそ「音場」が適していない状態です。風呂場のような響きの多い部屋で会議が行われないのも、風呂場の「音場」が会議をすることに適していないと考えられているからです。

従来この「音場」を生活や音楽に適した状態へと変化させるには、音響専門家による調査・設計を行い、手間のかかる工事をすることが必要でした。また小さな部屋ほど不快な音場になりやすい傾向があり、しかも面積などの制約から良い状態に変化させにくいという問題もありました。というのも音には低い周波数から高い周波数までが広く存在し、特に低い周波数を調整するには分厚い壁や部材を必要としていたからです。

そこで音響の専門家でなくても生活や音楽に適した「音場」を手軽に得るために開発されたのが、この『音場制御パネル』です。軽くて薄く、壁に設置するだけで簡単に「音場」を調整でき、さまざまな環境における音の問題を解決することができます。低い周波数から高い周波数までをバランスよく調整できるため、会議や集会などコミュニケーションを行う部屋や、音楽を演奏する部屋などへの適用が考えられます。

基本技術

パネルの働き・・・吸音性能と散乱性能

『音場制御パネル』は、室内をほどよい響きの量に整える「吸音」と、音響障害を除去し質の良い響きを生む「散乱」の2つの働きをすることで、誰でも簡単に部屋の「音場」を整え、良質で心地よい響きを創出することのできる音響部材です。

吸音」とは音が壁にぶつかったとき反射されずに吸収されることを指し、その吸音の度合いを「吸音性能」で表します。居心地の良い居間やホールなどは響きすぎず・吸収しすぎずの生活や音楽に適した環境(吸音性能)であると言えます。一方で高音ばかりがキンキンしていたり、低音ばかりがモコモコ聞こえてきたりする部屋は、この吸音性能が正しく調整されていない状態だと理解することができます。また「音響障害」とは「嫌な音」が発生してしまう問題で、低音域がこもるように響く「ブーミング」や、ビーンビーンという残響音がする「フラッターエコー」などが有名です。

下記動画では、これら音響障害のイメージを疑似体験いただけます(ヘッドホン環境推奨)。 「良い音」のためには、楽器やスピーカーシステムなどが「よい音源」であるとと同時に、それをヒトに伝える「よい音場(響き)」が不可欠であることをご理解いただけますと幸いです。

音場を整えるために設計された『音場制御パネル』を使えば、これらの音響障害を抑制することができるのです。

音場制御パネルと他の部材とで吸音率を比較したグラフ

音場制御パネル』は、吸音性能を表す吸音率の周波数特性が他の部材に比べてフラットで使いやすいという特徴を持っており、他の素材を複雑に組み合わせることなく、より手軽に「よい音場」を得ることが可能になります。

例えば、グラスウールパネルだけで吸音処理をしようとすると、中高音域はよく吸音するものの、男性の声の主な成分である低音域での吸音が不足してしまい、響きの周波数バランスをかえって悪化させることにもなりかねません。料理の味付けと同じように、バランス良い調整が重要な要素となっているのです。

複数の音響共鳴管

『音場制御パネル』は、中身が中空の管を複数つなぎあわせることで構成され、各管の片面一部に開口部を設けることで、管が開口部の上下で長短2本の共鳴管として働くように構成されています。この共鳴管と開口部の組み合わせが、共鳴管の長さに応じた特定の周波数を吸音散乱させ、「音場」を調整するのです。

共鳴管の仕組みを示した図

まるでそれぞれの管が対応する周波数を調整するイコライザーのような効果を発揮し、それが10本あることで幅広い周波数帯に作用できるため、まるでオーディオの音を好みに合わせて調整するかのように、手軽に部屋の「音場」を最適化できます。

音場制御パネルのつくりを示した図

薄型でありながら低音にまで作用

今まで低い周波数帯(125Hzまでの場合)に作用するための部材は500mmほどの厚みが必要であり、特に調整が困難とされていましたが、音場制御パネルのプロトタイプは、厚さ約30mm。大きさも幅600mm×高さ900mmで、1枚当たり4kgと大人が簡単に取り扱うことのできる仕様になっています。このパネルを会議室に設置すれば会話の内容が明瞭となり、音楽を扱う部屋に設置すれば心地よい響きを感じることができるでしょう。『音場制御パネル』を使えば、従来は高いコストをかけて専用に設計されていた部屋の響きをすぐに体験することができるのです。

関連サイト・ニュースリリース

製品ラインナップ:ヤマハの音場コントロール技術「調音パネル」
→製品へのお問い合わせはこちらのリンク先まで

2010年6月1日
音が明瞭になり、長時間でも疲れない響きに
薄さ3cmのパネルを壁に取り付けるだけで楽器練習室やオーディオルーム、会議室などを快適音響空間に ヤマハ 調音パネル 『TCH』

2009年7月17日
小空間向けの音響調整に最適な「音場制御パネル技術」を開発
3cmの薄さで広音域吸音・散乱を実現し、良質な快い響きの空間を創出

対外発表履歴

本地、栗原、藤森、小林 「小空間向け音場制御パネルの開発
- 音響管とバッフル面の組み合わせによる反射音の制御 – 」
社団法人日本音響学会 建築音響研究委員会2009年3月度研究会

本地、栗原、藤森 「音響管開口とバッフル面の組み合わせにより生じる散乱特性の検討」
社団法人日本音響学会 2009年秋季研究発表会

本地、栗原、藤森 「小空間向け音場制御パネル技術による室内モード抑制効果に関する検討」
社団法人日本音響学会 建築音響研究委員会2010年3月度研究会

関連技術一覧

音演出

音演出 Arrow_right_small

通常、空間を演出する際には、建築技法そのものや照明、場合によっては香りが用いられていますが、音演出ではそこに新しい要素として「音響」を取り入れました。

音場制御パネル(調音パネル) 用語集

音場制御パネル(調音パネル) 用語集 Arrow_right_small

音場制御パネル(調音パネル)の用語を解説します。
・音場(おんじょう)
・吸音
・吸音率
・残響室法吸音率
・(音の)散乱
・ブーミング
・フラッターエコー
・グラスウール
・共鳴管
・イコライザーなど。

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