研究開発

音響シミュレーション技術

音響シミュレーション技術で実験中

音響設計にとって、対象物を作る前に結果を予測することのできる「シミュレーション技術」は非常に重要です。一昔前、まだシミュレーション技術がなかった頃は、「とにかく作ってみないと分からない」というのが常識でした。もちろんそこには開発者の技術や経験がふんだんに注がれていましたが、それでも試作品を作って「今回の工夫は良かった」「今回の工夫はダメだった」という一進一退の開発が繰り返されることがありました。この方式には試作品の製作に時間やコストがかかりすぎる上に、無用なものを何度も作ることで廃棄物を生み出してしまうという問題をはらんでいました。

そんな問題を解決するために登場したのが、音響シミュレーション技術です。その導入により設計段階で音響を阻害する要因を見極め、悪い部分を試作品を作る前に排除することができるようになったため、設計の品質を高めるとともに製品開発に関する時間とコストを飛躍的に減らすことができるようになりました。

音響シミュレーションでは何ができる?

音響シミュレーション技術は、ある条件下で起きるであろう現象(例えばどんな音が鳴るかなど)をパソコンの画面上で視覚的かつ客観的に表現することにより、その現象を分析、解析する技術です。具体的には
・ 現状把握=何が起きているのか分析する
・ 原因分析=なぜそうなるのか分析する
・ 予測=どういうことが起こるのか解析する
などといったことを実現できます。

またシミュレーションでは理想的な条件、極端な条件を設定して何度でも実験をすることができるため、環境的要因に左右されない分析や、実際には測定困難な状況下での解析など、今までは様々な要因で行うことができなかった実験を短期間に行うことができます。特に1度作ってしまったら簡単には仕様を変更することのできない大型の製造物や建築物などの設計に大きな効果を発揮しています。

下記動画は、ヤマハ銀座ビルのヤマハホールの響きを、シミュレーション技法の1種である二次元波動音響シミュレーションを用いて予測したものです。従来はホールを作ってみなければ分からなかった響きの特性も、こうして設計段階で知る事ができるようになりました。

匠の技術を用いて

音響シミュレーションはパソコンを用いた分析・解析の方法ではありますが、その妥当性・有効性の検証には匠の技術とでもいうべき繊細な調整が求められます。というのも音響シミュレーションでは条件設定ひとつで結果が適当なものにもそうでないものにもなってしまう一方で、使うべき有効な条件とそうでない条件を見極めて設定しなければならないため、実験者に膨大なノウハウや経験則が必要とされるからです。ヤマハでは30年以上シミュレーションを行っている「その道のプロ」が主要な実験を行っています。

具体的な適用事例

ポータブルキーボードのスピーカーの音づくり

ポータブルキーボードは、限られたスペースの中で良質の音を追求しながらも軽量化を図る必要があるため、機械設計として開発の難しい製品でした。そこで音響シミュレーション技術を導入したところ、音響的に阻害要因となる部分が明らかとなり、設計パラメータの最適化を促進するとともに製品化までの試作回数を大幅に減らすことができました。

立体音響スピーカーの音づくり

音響シミュレーションは、ある方向から出た音が人間の耳にどのように聞こえるかを示す頭部伝達関数を、高い周波数領域まで精度よく予測するのに有効な手法です。本シミュレーションで、顔や耳の周りの音の反射やまわりこみ、そしてそれらの干渉まで詳細に加味して解析を行うことができます。このシミュレーションを用いて、まるで音が左前方から右後方に駆け抜けて行くような効果を実現することのできる立体音響オーディオシステムを開発することができました。

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新たな価値を創造するため

上記例以外にも音響シミュレーションが有効に使われる場面があります。それはコストと機能との兼ね合い(=コストパフォーマンス)を決めるような場面においてです。通常、コストの議論では「この機能を削れば●●のコストが削減できる」という検討がされがちですが、音響シミュレーションを用いることにより「■■の機能を足すことで、●●のコストが上昇するが、こんなにも素晴らしい付加価値を付けることができる」といった突っ込んだ議論を行うことができるのです。制約条件の有無や強弱を自由に変更できるシミュレーションを用いた開発ならではの特徴といえるでしょう。

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音響シミュレーション技術の用語を解説します。
・シミュレーション技術
・二次元波動音響シミュレーション
・立体音響など。

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