2015年12月、東京藝術大学の上野キャンパスでステージに上ったのは、筑波大学附属桐が丘特別支援学校(東京都)の生徒4名。

車椅子でピアノに向き合い、動かせる右手でショパンの『ノクターン』やEXILEの『道』を弾き始めると、それにあわせて、左手パートやペダル操作を自動演奏システムがサポートします。

充実した表情で弾き切った生徒たちに、観客席から心のこもった拍手が送られました。

これは、障がいを持つ方々と分け隔てなく美術や音楽を楽しめる空間を最先端の技術を使って提供する企画、「藝大アーツ・スペシャル2015 障がいとアーツ」のひとこまです。

この企画のひとつとして、手や足に障がいのある高校生がピアノを演奏するミニ・コンサートが行われ、聴衆に大きな感銘を与えました。

©平舘平

自分の大好きな曲を、自分の力で演奏したい

はじまりは、「障がいとアーツ」企画に取り組む東京藝術大学COI拠点の先生方が、桐が丘特別支援学校を訪問したことでした。

先生方は、脳性麻痺の生徒さんがグランドピアノに向かい、左手パートやペダル操作のサポートを受けながら、ショパンの『ノクターン』を右手の人さし指だけで黙々と練習し続ける光景に大きなインパクトを受けました。

生徒さんにとって「自分の大好きな曲を、自分の力で演奏する」ことが、切実な願いだったのです。

この願いをかなえるために、ヤマハのプロジェクトも動き始めました。

Disklavier™と自動演奏システムが夢をかなえる

ここで活躍したのが、ヤマハが提供した、自動演奏機能を持つアコースティックピアノDisklavier™ (ディスクラビア)と自動演奏システムです。

自動演奏システムの構成

Disklavier™から送られてくる右手の演奏情報に追従し、ペダルの動きを制御し、左手パートを鳴らすのです。

「開発者だけが把握しているようなコアな情報も動員して、何とかシステムの実現に至りました。演奏用のデータも、個々の生徒さん用にカスタマイズされたものになるようにテストを繰り返し、東京藝術大学COI拠点の先生が苦心して作り上げたものです。」
研究開発統括部 第一研究開発部部長 田邑元一氏は振り返ります。

桐が丘特別支援学校の生徒さん達は、ヤマハのシステムを使い、毎日練習を繰り返しました。最初は、なかなか一曲を通して演奏できませんでしたが、日々練習を工夫し、東京藝術大学での演奏の日を迎えたのです。

「自分の力で演奏する」ことが喜びにつながる

「機械の伴奏によってピアノを自分一人で演奏するほうが、人間が一緒に伴奏してあげるよりも倍以上喜んだんですね。そこが大きな発見でした。」
と、東京藝術大学 COI障がいと表現研究グループ 特任教授 新井鷗子氏は語っています。

「自分の力で演奏する」ことで、誰もが持っている「成長したい」「能力を拡張したい」という欲求をサポートできたことは、ヤマハにとって大きな収穫となりました。

 

COI拠点:文部科学省と科学技術振興機構の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」を推進する活動拠点

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ニュースリリース – ヤマハ 株式会社