ピアノ発音機構の精緻な物理モデルに基づく可視化・可聴化シミュレーション技術です。この技術は、ピアノ設計仕様(原因)と音・タッチ(結果)との因果関係、つまり、“ピアノ設計仕様のどこをどう変えたら音・タッチがどう変わるのか”を定量的に明らかにするものであり、例えば、ハンマーフェルトメーカー毎の音質の特徴やフレーム剛性変更による音質の変化を予測するなど、設計者が意思決定を行なう際に活用されています。

ピアノの「音」を物理モデル・シミュレーションで予測する

ピアノメーカーが理想とする「音」を目指して行っているピアノの改良とは、ピアノという巨大なシステムの全体最適解を求めることに他なりません。
従来行なわれてきたような経験的手法(実物試作による試行錯誤的な方法)だけに頼ってそれを行うのは、非常に多くの設計因子と誤差因子を有するピアノに対しては、特に効率が悪くなります。
本技術は、ピアノを構成する部品(ハンマー、ダンパー、弦、響板、フレーム、支柱など)および空気の相互作用を考慮した精緻な物理モデルに基づく大規模なコンピュータ・シミュレーションを実施することで、ピアノの設計仕様が変更されたときに、「音」がどう変わるかの予測を可能にするものです。

ピアノの「タッチ」を物理モデル・シミュレーションで予測する

ピアノ奏者、特にプロの演奏家は、ピアノのメカニズムを極限まで活用・駆使することで、「音」と「タッチ」を耳と指で敏感に捉えながら、聴く者に感動を与える「音楽」を生み出していると言えます。
ここで言う「タッチ」とは、物理的には、奏者の指が鍵盤から受ける力(奏者が鍵盤に及ぼす作用に対する反作用)のことです。
本技術は、ピアノのメカニズム(アクション)を構成する部品(ハンマー、ダンパー、サポート、鍵盤など)間の相互作用を考慮した精緻な物理モデルに基づくコンピュータ・シミュレーションを実施することで、ピアノ・アクションの設計仕様が変更されたときに、「タッチ」がどう変わるかの予測を可能にするものです。

仕組み

ピアノを構成する部品(ハンマ、弦、響板、フレーム、支柱など)および空気をモデル化し、それらの相互作用を考慮した運動方程式を時間軸上で逐次、数値的に解くことで各部品の運動および空気中任意観測点における音圧を算出します。
計算結果をアニメーションにすることで、ピアノの挙動や音響放射の様子を「可視化」しています。
また、得られた音圧波形をDA変換したものをオーディオ出力することで「可聴化」しています。
ヤマハ製Disklavier(TM)で記録した様々な楽曲のMIDIデータを上記計算の入力として用いることで、ピアノの設計仕様に応じた楽曲を合成することもできます。

今後の展開

ピアノ演奏の本質は、ピアノと奏者の相互作用にあることから、ピアノ・空気と奏者(指・耳・知性など)を一つの系とした物理モデル・シミュレーション・システムを構築することが我々の究極の目標です。